2020/06/02

ブルゴーニュ地方より、初めまして

オスピス・ド・ボーヌ

ブルゴーニュ地方より、初めまして

ブログを読んで下さっている皆様、初めまして。
フランス・ブルゴーニュ地方でワイナリーめぐりの通訳ガイドをしています、花田砂丘子(すなこ)と申します。
Tutta Italia 様とは、7年のお付き合いになります。
欧州でもコロナ禍はだいぶ抑制されてきた印象ですが、秋シーズン以降に旅行できるのか、安全面や現地の状況が気になる方も多いかと思います。
そこで、フランス政府の対応や、現地のツーリズム業界で耳にしたことなど、時折アップデートしてまいりたいと思いますので、どうぞよろしくお願いいたします。

フランス国内は今、どんな現状なのか

5月11日 外出規制の解除

3月14日の0時に全国のレストランやバーを閉鎖すると、大統領の発表があった時は、もうすでに前夜の20時でした。
週が明け、16日からは保育所から大学までの学校閉鎖、そして17日より商店やオフィスにも休業命令が出ました。
あれよあれよという間に、一気にロックダウンが始まった3ヶ月前が、とても遠い昔のことのように感じます。

外出時には証明書を携帯すること、違反すれば罰金刑というのは、今まで誰も経験したことのない厳しい拘束でした。
我慢がかなり積もっていたところ、「5月11日より順次解除」と政府の発表があり、これは本当に一筋の希望の光となりました。
解除開始までの3週間、政府はお膳立てを進め、私達は「あと少しだけ頑張ろう」という気持ちでカウントダウンしていました。

コロナ対策の入口掲示 コロナ対策のアルコールジェル

6月2日 規制緩和の第2フェーズ(今ココです)

外出規制の解除から3週間後、6月2日からは「第2フェーズ」に入るというのが、フランス政府から国民への約束でした。
その内容が数日前になって発表されましたが、最も待ち望まれていたニュースは、全国のレストラン、バー、宿泊施設の再開です。
パリと近郊の県においては、テラス席のみの営業が許可されることになりました。
意外に早く再開されたことに正直驚きましたが、状況は政府が期待していた以上のペースで改善しているそうです。

「フランス人もやればできる!」
「私たちにも規律ってものはある!」
国民同士の間でも、テレビの討論番組などでも、何度もこのフレーズが聞かれたのには思わず笑ってしまいました。
普段は自由きままで、個人主義で行動するイメージのあるお国柄ですからね。

よくお客様をお連れしているホテルや、ワイナリーなどからも、近況を兼ねたお知らせメールがいくつか届きました。
「コロナ後」の営業は、以前と同じようにはできないですし、皆様が安心して滞在できる環境を提供しなくてはなりません。
従業員や設備の対策が必要なので、6月末から7月初めのオープンを目指して準備期間中、との内容が多かったです。
再開したレストランも、まだ半分くらいかといった印象です。

ともかく、ツーリズム関係者にとっては、大きな大きなステップとなりました。
お客様が安心して旅行を検討していただけるように、今後もこういった現地の状況をお伝えしてまいりたいと思います。

ブドウ畑の作業

ぶどう畑に咲くヒナゲシの花

ブルゴーニュ地方 日常生活のひとこま

ブドウ畑と収穫の予定 2020年はとても早熟なヴィンテージ

ワイン愛好家の皆様にとって一番心配なのは、「今年のワインはどうなるの?」ということかもしれませんが、ご安心ください。
ロックダウン中は、医療・公共サービス・スーパーなどと同様に、農業従事者にも特別な外出許可が出ていました。
私たちが自宅でのんびり過ごしていた間、彼らはいつも以上の感染対策を強いられつつ、変わらないペースで仕事を続けてきました。

たぶん生産者たちの精神的な後押しになったのは、今年の春は本当に気候が良かったことでしょうか。
このところ暖冬の年が多く、早い時期からブドウが芽吹くようになりました。
その割には4月までは明け方にマイナス気温になることもあり、いわゆる「春の遅霜」と呼ばれる被害で、ブドウの芽がダメになってしまうことがよく起こります。
今年は、こういった懸念も切り抜けることができました。

5月に入ると、信じられないスピードで蔓がぐんぐん伸びているように感じました。
何人かの生産者に尋ねたところ、例年より3週間くらい早い成長とのことで、5月20日頃から開花が始まりました。
昔の人の言い伝えで「開花から100日後に収穫」というのがセオリーですので、今年は8月下旬にヴァンダンジュ(収穫)が始まることになります。

ブドウの開花

毎年の収穫を手伝ってくれる頼みの綱は、地元の常連さん(つまりベテランの年輩者が多い)、家族単位のジプシー、ポーランドやポルトガルからの出稼ぎの人などです。
こういった人達は、今年は国境を越えて来てくれるのだろうか?
一抹の不安は抱えつつも、垣根仕立てや、ブドウの房数を整える仕上げの作業は、もうじき終盤を迎えます。

人手不足の心配はともかくとして、このまま夏が無事に過ぎてくれれば、品質面では申し分ないワインになりそうです。
私も近くで見ていて、ひしひしと感じることができますので、2020年ヴィンテージにどうぞご期待ください。

フランス人もマスク着用が当たり前に

「アジア人だけのもの」と思われていたマスクが、フランスに住む人達にとってにも、日常的なものとなりました。
公共交通機関を利用する時、ジョギングをする時、スーパーの入口に並ぶ時、中学校以上も着用が義務となっています。
(余談ですが、「ニッポンでは小学生がおとなしくマスク着用するらしい!すごい!」と話題になっていますよ。)

夏を経て、この習慣がどう変化するかは分かりませんが、皆様が旅行に来られる時期になっても、変わっていない気がします。
ご不便をおかけすることになりますが、ご自身と訪問先の相手の健康を守るための、新しいスタンダードとなりそうですね。

マスク・グラン・ピュブリック

おまけですが、「アベノマスク」ならぬ、フランス国民に一律配布された「マスク・グラン・ピュブリック」の写真です。
ボランティアの人達が慌てて縫ってくれたのでしょうか、ちょっとミスがあるのもご愛嬌です。

ツーリズム再開に向けて

本格的な再開は、秋以降に期待

フランス人にとって最大の関心事は、「恒例の夏のヴァカンスはどうしよう?」ですね。
今年の夏は、フランス人はフランス国内でヴァカンスに出かけましょう、と政府や世論が頻繁に呼びかけています。
友人達に「夏休みどうする?」と尋ねても、「あまり派手には出かけない」「実はやっぱり感染が怖いので」という人がかなりいます。
我が家も決めかねていますが、少し遠くの親戚宅でも訪ねるのが、孝行にもなるし費用の心配も少なくていいような気がしています。

つい先日の政府発表で、6月15日より、英国とスペインを除くEU加盟国との国境が開放されることになりました。
EU圏外からも入域容認に向けて、一歩ずつ段階を進めていってくれることを期待しています。
9月からは、少しずつでもお客様がフランスに戻って来てくださるといいなと思います。
収穫を終えたブドウの葉が黄色くなり、村々は醗酵するブドウの香りでいっぱいになる、ブルゴーニュの最も美しい季節がやって来ますから。

今までのCOVID-19の変遷が全く予想もつかない展開だったように、今後のことも誰にも予測できませんが、現地では「コロナ後」に向けての準備と対策が進められています。

ブドウ畑の風景

ワイナリーでの衛生対策は、どうなっているのか

5月11日の封鎖解除によって、ワイナリーの営業活動の再開が認められました。
もちろんお客様がすぐに押しかけることはありませんが、近況報告も兼ねて、いくつかのワイナリーからメールを受け取りました。
お客様と訪れるワイナリーは、ブルゴーニュ地方では、小規模でアットホームな蔵が圧倒的に多いです。
あの小じんまりとしたスペースで「ソーシャル・ディスタンス」を保てるのか?と気になりましたので、視察に行ってまいりました。

ドメーヌ・コント・スナール入口

「ドメーヌ・コント・スナール」は、コルトンの丘の麓にあり、150年の歴史がある家族経営のワイナリーです。
若いソムリエさんの案内で、敷地内の所有畑や、13世紀末ベネディクト派修道士のカーヴを見学した後、ドメーヌのワインを何種類か試飲しながら、ランチがいただけるコースが人気です。

まず以前と変わったことは、必ず事前の予約が必要となり、マスク着用のお願いもしているそうです。
フランス政府・保健省からの通達どおり、テーブルに着席の際は、今までの倍の間隔を空ける必要があるため、ランチの定員は30名から17名に減りました。
ダイニングルームに入ってみると、ずいぶん間が空いているような印象を受けました。

ブドウ畑の区画図、ワインの価格リストなどの資料類、ワインを飲み込まない方のための吐器などは、シェアすることのないよう、すべてお1人様ひとつずつ用意されるそうです。
現在のところは、入口に消毒ジェルのチューブが置いてありましたが、もっとしっかりした備え付け型の消毒機が来週搬入されるそうです。
念には念を入れた感染対策で、お客様にとっては安心とはいえ、「コロナ後」の社会は違った風景になるのだろうなと実感しました。

ブルゴーニュ・ワインめぐりの新スポット

ムルソー村のレストラン 【Au Fil du Clos】

昨年10月に、ひときわ目立つレストランがオープンしたと思っていたら、たちまち地元での評判が上がりました。
ムルソー村にある【Au Fil du Clos】は、ちょうどシャトー・ド・ムルソーの隣に新築したばかりで、モダンな館が映えます。
ダイニングは窓の大きな設計で、食事中でもテラスからも、広大なブドウ畑が眺められるシチュエーションです。

シェフのクリストフ・ムーテ氏は、昨年までポマール村の【Aupres du Clocher】でシェフを務めていました。
階下にある肉屋さん【Moron】から仕入れる良質な食材、クリストフ氏の作るボリュームたっぷりのお肉料理が私は大好きでした。

【Au Fil du Clos】も、3ヶ月間の休業を経て、ようやく6月18日に待望の再オープンを迎えることになりました。
残念ながらすぐに見に行くことはできませんが、レストラン側のご厚意で、いくつか写真をお借りしましたのでご紹介します。

徒歩2分のところに、フルーツ・テラピーで評判のシャトーホテル【La Cueillette】もあり、きっと快適な滞在になりますよ。
街の喧騒から離れ、ブドウ畑に囲まれたムルソー村で、ゆっくりと寛いでお過ごしいただければと思います。

レストラン 【Au Fil du Clos】
https://aufilduclos.com/

 

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ワイナリー、ホテル、レストランは、長くて辛かった春を何とか乗り越え、夏以降に向けて協力関係で復活しようとしています。私もその一端を担うことができればと思いますので、ご質問やお問い合わせ等、ぜひTutta Italia さんにお寄せください。