2020/09/07

フランスの夏休み/バカンスはプチホテルで/ブドウの収穫スタート

フランスの2020年夏休み

ブログを読んでくださっている皆様、こんにちは。

今年の夏休みは、ちょっと遠出しづらい雰囲気でしたね。海外旅行が遠のいてしまった、と感じられた方も多いことでしょう。

フランスも同様で、#cetétéjevisitelafrance(今夏はフランス国内を訪ねよう)というハッシュタグが流行りました。パリ市内の美術館はオンライン予約が必須となり、ヴェルサイユ宮殿もチケットの事前購入を積極的に宣伝したことで、長蛇の列が無くなったそうです。初めてゆったりと訪れることができた、と驚き混じりの声しきりです。

我が家も、バカンスはどこへ出かけよう?ビーチは混雑しているかな?ホテルの感染対策は本当に信頼できるの?と、あれこれ悩みました。実際に宿泊施設の方々に質問してみると、やはり直前まで迷ったり悩んだりする人が多かったのか、数日前の駆け込み予約が多かったのが今夏の傾向だそうです。

結局、娘を連れてのバカンスは、ノルマンディ地方にいる義母宅に居候することになりました。近隣に親戚一同が住んでいるので、毎日誰かの家に集まっては、食べて飲んでお喋りするだけ・・・地味ですが親孝行ができたと思うことにします。このような感じで2020年の夏休みを過ごしたファミリーは、とても多かったようです。

 

帰路2泊だけどこかに立ち寄ろうと、3室だけの小さなゲストハウスを探して予約しました。不特定多数の出入りが無いので、リスクを減らせると思いましたし、マダムが丁寧に消毒作業をしているのを目にして、かなり安心して滞在することができました。

「Tutta Italia」さんでも、イタリアのアグリ・ツーリズモなど小規模な宿を、以前から積極的に紹介されていますが、皆様がまたいつか海外旅行に出かけられるようになる時、少しでも安心して穏やかに過ごせるのが、こういったタイプの田舎のプチホテルかもしれない、と今回ふと思いつきました。

ブルゴーニュ地方で、日本人マダムが迎えてくれる小さな宿を2軒ご紹介したいと思います。どちらも細やかな気遣いの感じられるサービスで、言語の心配もなく滞在できますので、今後ぜひ候補に入れていただきたい宿です。

ディジョン/日本人マダムのプチホテル 【ル・プチ・テルトル】

前回7月の記事でも、ディジョンの街の風景をお見せしましたが、パリ・リヨン駅からディジョン駅までは、TGVで1時間40分ほどです。14~15世紀に「ブルゴーニュ公国」の王宮が置かれ、その後にフランス王家による政治の中心となった時代もあり、豊かな文化や歴史、中世の建築が楽しめる街です。

「大公宮殿」の裏手は、アンティークや家具の店が並ぶ地域で、日本人マダムの佐々木ミシュレー裕夏さんが迎えてくれる宿【ル・プチ・テルトル】があります。ディジョン市内の街散策やショッピング、食べ歩きに便利なロケーションにあるプチホテルです。

裕夏さんとアランさん夫妻は、大のアンティーク好きで、おふたりの熱意と趣味が内装にもふんだんに活かされています。ベルサイユ式の床材、ステンドグラス窓、ルイ14世スタイルのクイーンサイズベッドなど、小さなシャトーホテルのような趣き。18世紀の貴族になったような雰囲気を楽しんでいただきたいです、とのこと。

「ロマン」「エンパイア」「ルネッサンス」「レジェンシー」「バロック」と名付けられた5室は、お部屋ごとに家具やリネンの色合いが異なり、どの部屋に泊まろうか迷ってしまいます。ミニプラネタリウムがあったり、ディジョン旧市街の家並みを眺められる部屋もあります。

ご主人の本職はピアノ調律師ですが、私がお邪魔するときはいつも「工事のオジサン」で、常にリノベーションのアイデアが溢れている人。これは秘密と言われましたが、今は何と人力車の改造に取り組んでいます。家具でも自転車でも、古いものを生き返らせるのが趣味・道楽なのだそうです。

フランス在住25年になる裕夏さんは、小柄でいつも可愛らしい装い。お部屋の準備、お客様の出迎え、朝食まで全て1人で取り仕切っておられます。趣味はスイーツを食べることですが、その分のカロリーは、仕事の合間にスポーツジム通いでしっかり消費、というアクティブなマダムです。

6月4日の再オープン直後は50%程度の稼働率だったものの、7月以降は90%以上と、以前の繁盛ぶりをすっかり取り戻すことができたそうです。半分はフランス人、あとはドイツ、ベルギー、オランダからのお客様が元から多いそうですが、やはりヨーロッパ人は、こんな年でもバカンスに出かけるのですね。

自家用車の後ろに自転車を搭載して来る人が多いそうです。ディジョンの街から少し離れると、ブルゴーニュ運河に沿ったサイクリングロードや、2019年に整備されたばかりのグランクリュのブドウ畑・サイクリングロードなどがあります。修道院やロマネスク教会めぐり、少し足を延ばしてジュラ地方やシャブリ地域などへも1時間半程度で訪れることができます。長期滞在の場合は、各部屋に冷蔵庫・電子レンジ・湯沸かしポット・食器類も備え付けられていて便利です。

今後お越しになるお客様のために、【ル・プチ・テルトル】では、以下の点に注意してサービスを行っているそうです。

■客室の清掃やサービスは、マダムが1人で行っていますので、感染リスクが非常に低いと言えます。
■お客様の入れ替え時には、客室や共用スペースの念入りな清掃と消毒を行っています。
■通常のアメニティに加えて、お部屋のテーブルに消毒ジェルを用意しています。
■リネン類は、マダム自身が高温で洗濯・アイロンかけをしています。
■朝食はルームサービスです。(コロナ前からのスタイルです。)
■各客室は独立したアパルトマンですので、他のお客様との接触はありません。

ベッドカバーやクッション、必要不可欠でない装飾物、紙類などは取り除き、お部屋内で消毒可能なものと廊下や階段などの共用スペースは丁寧に消毒しているそうです。リスクを最大限に除いてくれていますので、安心して滞在することができます。

フランスではよく「formation」といって、事業者に対する講座や勉強会のようなものが、政府による費用負担で提供されています。今回のコロナ禍においても、「衛生管理と感染防止」「経営戦略」「オンラインを利用したマーケティング」などを受講するよう、政府のほうから勧めがあったとのことで、マダムも休業中の時間を有効活用して受講したそうです。政府の徹底したサポート体制には感心させられますね。

ディジョン発着でワイナリーやブドウ畑を巡るツアー、上記のロマネスク教会めぐり、ジュラ地方・シャブリ地域などへは、私自身が運転も兼ねてご案内させていただきます。ご出発前に「Tutta Italia」さんにお問い合わせいただくか、フランス到着後でしたらマダム裕夏さんにお尋ねください。

【客室情報】
クイーンサイズベッド、薄型ケーブルテレビ、クローゼット、バスルーム(シャワーまたはバスタブ)、ヘアードライヤーとアメニティ類、冷暖房完備、無料Wifi、冷蔵庫、電子レンジ、食器類など
全5室/1~3名様可能な客室もあり/朝食付
ご予約は「Tutta Italia」さんにお問い合わせください。

リュリー村/日本人マダムのメゾン・ドット 【クロ・ダニュ 1840】

ブルゴーニュ地方に2~3泊くらいで日程に余裕のある方は、ブドウ畑に囲まれてゆっくり過ごしてみませんか。ディジョンから1時間(68km)、ボーヌから30分(23km)車を走らせると、リュリー(Rully)村にある【クロ・ダニュ1840】に到着。日本人マダムの加藤ランドリー由香さんが迎えてくれます。

由香さんは、モード界でキャリアを積み、有名ブランドのパリ支社勤務や、ファッションショーのバックステージを支えた経験もあるそうです。ご主人のジャン・マルクさんと2004年に結婚後は、香港や上海にも住み、おもに東京をベースに食・レストランのPRコンサルタント、時計ブランドのプロモーションに携わりました。

目まぐるしく変化するビジネスの世界から、いつかはフランスの田舎暮らしへ。将来を見据えてリタイアライフの地盤を作れるような仕事をしたいとの希望があり、ご夫婦ともワイン・グルメ好きなこともあって、ブルゴーニュ地方を中心に物件をあたったそうです。リュリー村のこの邸宅にめぐり逢い、今から約3年前に【クロ・ダニュ1840】の新しいストーリーが始まりました。

屋根や建物の構造はしっかりしていたものの、バスルームの改築、壁紙のチョイス、リヨンの骨董市で家具を見つくろい・・・といった準備にかなりの時間を費やしたそう。前出のディジョンの【ル・プチ・テルトル】が中世の貴族風アンティークなら、こちらは19世紀のブルジョワの邸宅のアンティーク、といった趣向です。

どの客室も広々として、大きな窓から優しい光が差し込みます。白とグレーを基調にスッキリとした壁面に、アンティークのシャンデリアや金枠の大きなミラーが映え、マダムの美意識とセンスの良さが感じられるインテリアです。

取材に伺った8月下旬の午後、庭先のブドウ畑がちょうど収穫作業中でした。リュリー村は、コート・シャロネーズ地区にあり、赤ワインもありますが、どちらかというとシャルドネ種から造られる白ワインとクレマン(発泡酒)が有名です。軽やかな果実味とスッキリしたミネラル感、価格とのバランスも良いことでお勧めのワイン村です。

由香さんご自身も、東京にいた頃には、フランス人シェフやボルドーのシャトーのイベント企画に携わり、ある1杯のワインに「まるで交響曲のようにワッと花咲いたような感覚」を受けて、ワインスクールで勉強されていたそうです。現在は、地元ブルゴーニュの良質な生産者を探し求めてドメーヌ訪問が楽しみのひとつ。見つけてきたワインは、お客様にもお勧めしているとか。

あくまでホテルではなく、「メゾン・ドット」というコンセプトを大切にしているそうで、親戚の別荘にでも滞在するように、メゾン全体を自由に使っていただきたいそうです。続き間になっているサロンとライブラリー(心地良いBGMが流れています)、広い庭も、我が家のように寛げるスペースです。ミニバーは置かず、飲み物も気軽にマダムにお声をかけてくださいとのこと。

ランチやディナーをご希望のお客様には、ご主人のジャン・マルクさんが腕を奮ってくださいます。敷地内の農園からは、季節ごとの野菜やフルーツがふんだんに採れます。またブルゴーニュ地方南部は、有名なブレス鶏の産地にも近いです。街中のレストランと違って、家庭的な大皿料理でワイワイ取り分けていただくのが、夫妻がお勧めするメゾンのスタイルです。厨房の暖炉に「1840」と年号の入った鉄板が残されているのを見て、なるほど・・・と納得。

古い屋敷やアンティーク家具の修理は、思いのほか忍耐と時間がかかります。ひとまず快適に滞在できる形になり、2019年秋にオープンしたものの、これから窓枠を直したり、イメージに合ったタンスの把っ手を探し続けているそうです。まだ変えたいところはあります、未完成ですが少しずつ仕上げていく現在進行形を楽しんでいるんです、と由香さん。

お部屋は3室。ロックダウンからの再開後は、緩やかなペースで予約が入ってきており、スイス、ベルギー、オランダなど欧州圏内に在住の方、パリからお越しの方など、日本人のお客様も何組も泊まられたそうです。メインとなるお客様層は30~40代以上のワイン・グルメがお好きな方々でしょうか。別荘のつもりで来てくだされば、リクエストに応じてランチやディナー、ワイナリー訪問や散策などの送迎まで、夫妻が温かいサービスでお手伝いしてくれます。

もちろん、私自身も由香さんとコラボしますので、少し専門性の高いワイナリーツアーやロマネスク教会めぐり、他地域への遠出など、必要に応じてお手伝いします。ご出発前に「Tutta Italia」さんにお問い合わせいただくか、フランス到着後でしたらマダム由香さんにお尋ねください。

【客室情報】
全3室(1~2名様用2室、1~3名様用1室)/朝食付
バスルーム(バスタブ付き)、ヘアードライヤーとアメニティ類、ミネラルウォーター、無料Wifi、パーキングあり
貸切予約の場合は、事前の滞在アレンジ、クルーゾ・モンソーTGV駅や訪問先への送迎ができます。
いずれもミニマム2泊より承ります。
ご予約は「Tutta Italia」さんにお問い合わせください。

8月下旬、ヴァンダンジュ(ブドウの収穫)がスタート

2020年は、ワインの生産者達にとっても、記憶・記録に残るヴィンテージとなりそうです。

2020年春のロックダウンで、ワイン業界は輸出どころか国内販売も完全にストップしてしまい、在庫を抱えたドメーヌに不安感が漂っていました。それでも太陽とブドウは待ってくれず、暖冬の影響もあり、春先からのブドウ畑の作業は早いスタートとなりました。

何軒かのドメーヌに話を伺いましたが、1人も感染者を出すことのないよう、様々な対策を打ちながらの毎日の作業。収穫時にいつも来てくれた年配のベテランや外国人労働者(ポルトガル・ポーランドからが多いと思います)は、今年は頼れる見込みが少ないので、人手が集まらないのではないか。収穫時に皆が楽しみにしている、大きなテーブルを囲んでの食事は難しいであろう。こういった心配の種が尽きませんでした。

そして、本当に天候の良さに恵まれた、ほどほどに暑かった夏。雹などの被害が殆ど無かったこと、雨不足で病害が発生しなかったことから、2020年ヴィンテージに対する期待は高まっていきました。

近年のブルゴーニュ地方では、2003・2007・2011年などが早熟なヴィンテージと言われますが、今年は早摘みの記録を作ってしまったドメーヌも多いのではないかと思います。8月20日頃から、白ブドウを中心にヴァンダンジュ(収穫)が始まりました。

すれ違うトラックに乗り込む人達は、皆さんマスク着用です。太陽の下で作業をしている時もマスク着用、一畝切り終えてのちょっとした雑談(これが楽しい出会いなのに)も控えめで、かなり辛い状況ではないかと思います。

午前と午後に1回ずつのおやつ、昼の食事も、今年は個別包装のランチボックスで対応している所が多いようです。同じ釜のメシを食べてワインを酌み交わす・・・いつもの光景が見られないのは、本当に寂しいというか、別世界のようと言うしかありません。

じつは我が家も小規模なワイナリーですので、収穫風景をお見せします。娘と父親が2人だけで作業していますので、感染対策も必要なし。ピノ・ノワール種は、小粒で爽やかな酸味がある段階で、早めに収穫できましたので、とても満足しています。

次回のブログ記事では、ヴァンダンジュの現場にもう少し踏み込んで、醸造所や賄いの様子などもライブ感覚でお見せできればと考えています。また、秋の気配が少しずつ近付いて来ましたので、やはり秋の味覚の話題でしょうか。チーズやトリュフの生産者を見学できる施設がありますので、いつか皆様がブルゴーニュへお越しくださる時の参考になりそうな記事を予定しています。

皆様がお知りになりたい事、フランス旅行について疑問に思われる事などありましたら、Tutta Italiaさんまでお寄せいただければ幸いです。

(ブルゴーニュ/花田砂丘子)