『ローマ建築』
次に、ローマのフォロ・ロマーノにあるティトゥス帝の凱旋門を例にローマ建築の特徴を見ていきましょう。
◆ティトゥス帝の凱旋門(ローマ)
ティトゥスの凱旋門は、現存するローマ最古の記念門と言われており、フォロ・ロマーノの一角にあります。アーチの裏や横の部分に描かれた装飾も繊細で見応えがあります。
―特徴
1.ギリシャ建築で用いられたような柱とともにアーチやドームなどの曲線が見られる。
ティトゥスの凱旋門にはギリシャ建築の特徴であるイオニア式とコリント式を合わせた、装飾豊かな柱がモニュメント建築として初めて用いられました。ローマ建築ではギリシャ建築を基盤とし、さらに発展したローマ的な建築が確立していきます。この頃からアーチやドームなどの曲線が頻繁に見られるようになりました。
2.運搬や加工のしやすい大きさの石やレンガを使用されている。
アーチやドーム状の建物が建てられるようになった理由の一つに、加工のしやすい大きさの石が使われるようになったというのがあります。ローマのコロッセオを例に見てみましょう。
◆コロッセオ(ローマ)
コロッセオは80年に完成した円形劇場です。4階建てで、下の層からドーリス式、イオニア式、コリント式の柱で飾られています。コロッセオをよく見てみると石材が積み上げられて建てられているのが分かります。ギリシャ建築と比べると一つ一つの石材は小さく、このおかげで運搬や加工がより効率的にできるようになったと言われています。
そして、ローマ建築が発展した大きな理由が「コンクリートの発明」です。
3. コンクリートが発明された。
運搬や加工がしやすい石材が利用できるようになったのも、それにより曲線のある建築物を作れるようになったのも「コンクリートの発明」なしにはできなかったことでしょう。コンクリートはカンパニア地方産出のポラゾナと称する火山灰土、石灰、石やレンガ片、水を混ぜ合わせて作られたものでした。現代のコンクリートの寿命は50年から100年程度と言われている中で、その何倍もの強度を誇るローマのコンクリートのおかげで、ローマ建築はより芸術的で頑丈な建物を建てることが出来ました。
◆パンテオン(ローマ)
パンテオンはローマ建築の中でも、最も完全な状態で残る建物として一目置かれている世界最大のコンクリートおよび石造りの建造物です。ミケランジェロが「天使の設計」と称賛したことでも知られています。正面の入り口はギリシャ建築を思わせる柱が並び、内部はサン・ピエトロ大聖堂をしのぐ大きなクーポラで覆われています。クーポラは上部に行くにしたがってより軽量の材料からなるコンクリートが使用されています。
◆マルケルス劇場(ローマ)
写真のマルケルス劇場はコロッセオのお手本ともなったといわれる劇場で、ヴェネツィア広場をぐるりと周り、カンピドーリオの丘を左手に見ながら歩いていると突如現れます。紀元前11年頃の古代劇場で、当時は1万5000人を収容できる規模でした。土台の2層のアーチ部分がローマ時代に造られたもので、その上に、ルネッサンス後期の建物が16世紀に増設されました。上部の増設された建物は現在も住居として使用されています。2,000年以上も前に造られた建物が今も住宅の土台として利用できるほど、ローマのコンクリートは頑丈なものであることが分かります。
―その他ローマ建築が現存する都市
ポンペイ(南イタリア)、ティボリ(ローマ近郊)など
いかがでしたでしょうか。
ギリシャ建築からローマ建築まで建築様式を見ながら、現存するイタリアの貴重な建造物を見てきました。
先人の知恵と技術を取り込みながら発展し、そこからまた新しい建築様式が生まれることがお分かりいただけたかと思います。
現地に足をお運びの際には、ぜひ間近でたくさんの歴史的な建物を観察して、更にたくさんの発見をしていただきたいです。