イタリア事情にちょっと詳しい人であれば、ナポリの美味しいピッツェリアの名前はすぐに思い浮かぶのではないでしょうか。中にはダ・ミケーレやソルビッロなど、日本にも支店を出しているお店もあり、すでに食べたことがあるという人もいるかもしれません。

これらのピッツェリアはもちろん美味しいのですが、世界的に有名になりすぎたため多くの観光客が殺到するようになってしまったのが悩ましいところ。店内に入るまでに1時間を超える行列に並ぶことも珍しくありません。

日本人は比較的行列に並ぶことに慣れているので「1時間くらいなら……」と思う方もいるかもしれませんが、観光に疲れてたどり着いたお店で、さらに長時間待つのはできれば避けたいところ。ピッツァはできれば、地元ナポリっ子のようにサッと注文して気楽に食べたいものです。

さて、そんな気楽なピッツェリアとしておすすめしたいのが、ナポリの下町スパッカ・ナポリに店舗を構える「トリアノン・ダ・チーロ」です。

道路向かいにあるダ・ミケーレは常に行列ができていますが、こちらは店内の席数が多いせいか並ぶこともなくすぐに入店できるのが嬉しいところ。「行列がないなら、美味しくないんじゃないの？」なんて言う方は、まずはトマトソースとモッツァレッラチーズだけのシンプルな「マルゲリータ」を注文してみてください。

いかがでしょうか？
焦げ目がつくほどしっかり焼かれ、トマトソースやモッツァレッラを包むふわふわの生地はまさにナポリピッツァの王道といった感じ。アクセントになるバジルの葉っぱが少し多めなのも嬉しい演出です。正直、行列を作るような他店と食べ比べてみても、味が劣るとはまったく思えません。

せっかくなので、もう一度アップでお見せしましょう。あえて他店との違いを言うなら、トマトソースの酸味が強く、タップリとかけられたオリーブオイルの風味と相まって「まったり」よりは「華やか」な印象という点でしょうか。このあたりは好みもあるので、万人にとってベストとは言い切れませんが、少なくとも本場ナポリピッツァの名に負けない味であることは間違いありません。

トリアノン・ダ・チーロのピッツァのもう一つの特徴は、マルゲリータのバリエーションの多さです。通常、ピッツェリアのメニューは上に乗せる具によって名前が変わります。例えばマルゲリータにアンチョビを乗せると「ピッツァ・ナポリ（ナポリ風）」、野菜を乗せると「オルトラーナ（農夫風）」といった感じです。これはこれで面白いのですが、名付けルールに慣れていない観光客にとってはどのようなピッツァなのか想像しにくいという欠点もあります。

その点、トリアノン・ダ・チーロでは「マルゲリータ＋〇〇」という表記のため、上に乗せる具が分かりやすく、自分の食べたいものを注文できます。本当に美味しいピッツェリアかどうかは、マルゲリータを食べればわかると言われますが、あえてマルゲリータをベースにしたメニュー表記にするのは、こうした同店のこだわりから来ているのかもしれません。

店内を見渡してみると、周囲に座っているお客さんは家族連れや老夫婦、仕事の休憩中といった人が多い印象です。耳をすませてみると少し聞き取りづらいナポリ弁が聞こえてくることからも、地元の人が多い店のように感じます。地元に住んでいたら、わざわざ行列に並んでまで観光客だらけのピッツェリアに行きたくないですよね。そのお気持ち、なんとなくわかります。

最後に、お店を出る前に1枚だけピッツァの窯を撮らせていただきました。当然ですが、美味しいピッツァを焼くのに欠かせない「コット・ア・レーニョ（木を焚いた釜焼き）」です。

地元ナポリっ子に愛され、行列に並ばなくてもすぐに食べられる絶品のピッツァ。もしナポリを訪れることがあれば、ぜひ試してみてください。

ピッツァリア・トリアノン・ダ・チーロ（Pizzeria Trianon da Ciro）
住所： Via Colletta, 44, 80139 Napoli
電話番号：(+39) 081-5539426